後継者不足の根っこにあるもの

日本の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す指標)は長年にわたって低下傾向が続いており、人口を維持するために必要とされる水準を何年も下回る状態が続いています。この傾向がこのまま続けば、経営を担う人材の裾野そのものが先細りし、中小企業の経営者の多くが高齢層に偏っていくことは想像に難くありません。

高齢の経営者が培ってきた知恵は、事業承継においても欠かせない財産です。同時に、大きく変化する時代に対応するには、若い感性を持つ経営者や後継者の存在も必要です。両者が融合しながら承継が進んでいくことが理想ですが、そのためには、まず中長期的に子どもの数を増やしていくことが土台になると私は考えています。

子どもを増やす鍵は「有配偶出生率」

合計特殊出生率は、結婚しているかどうかを示す「有配偶率」と、結婚している女性が実際に産む子どもの数を示す「有配偶出生率」に分解できます。このうち有配偶出生率は、子育てのしやすさと直結しています。

妊娠から出産、そして子育ての期間は、女性の時間を大きく拘束します。男性も育児に関わりますが、心理的にも身体的にも女性の負担がより重いのが現状です。だからこそ、男性が育児に費やす時間を増やし、育児休暇を取りやすい環境を整えることが、女性の負担軽減につながります。加えて、妊娠・出産・育児によって女性が働く機会やキャリアアップの機会を失わずに済む社会をつくることも、有配偶出生率を高めるうえで欠かせません。

出生率の高い地域に共通する3つの特徴

合計特殊出生率が高く、かつ出産・子育て期の女性の就業率も高い地域には、共通する特徴があります。三世代世帯の同居率が高いこと、潜在的な保育所定員率が高いこと、そして通勤に要する時間が短いことです。

三世代同居であれば、妊娠から子育てまでを家族が一丸となって支える体制をつくりやすく、女性は安心して子どもを預けて働きに出られます。通勤時間が短ければ、子育てに使える時間、そして女性自身が休む時間も増えます。

「シッター」と「ナニー」という仕組みに見た可能性

我が家は今まさに子育ての最中ですが、夫婦とも両親を亡くしており、頼れる親がいません。三世代同居はかないません。そんなときに知ったのが「シッター」と「ナニー」という仕組みです。ナニーとは、保育に関する資格や知識を持ち、教育的なサービスも提供できるベビーシッターのことで、私自身、この言葉を知りませんでした。

我が家でも実際に利用していますが、来てくださる方には20〜30歳代もいれば、子育てが一段落した、あるいは終えた50歳代以降の方も多くいます。血のつながりはなくても、地域や社会全体で子育てを支える仕組みを整えれば、三世代同居と同じような環境を家族の外側につくることができる。一家族だけでは難しいことも、社会全体で仕組み化すれば実現できるのだと気づかされました。

子どもが増えれば、いずれ後継者の裾野も広がります。社会全体で子育てを支え、社会全体で次の担い手を育てていく。事業承継の問題を、目の前の一社の承継計画だけでなく、こうした少し長い時間軸からも考えてみてはいかがでしょうか。