本シリーズは、事業承継センター取締役・東條裕一が、経営者から聞いた言葉と、経営者として伝えたい言葉を書き留めた「勇気をもらう経営者の言葉」を、一言ずつコラムとして再構成したものです。志や覚悟、そして勇気を、後継者のみなさんと分かち合えればと思います。

目標はまずは鉛筆なめなめで良い。要は手段を出せるか出せないかだ。

なぜ、この言葉なのか

目標数値をめぐっては、経営者の姿勢が分かれます。数値目標を明確に出す会社もあれば、「やってみないとわからない」「初めてのことで予想が立たない」といった理由をつけて、数字を当てこまない経営者もいます。

もちろん、最初からどれくらいできそうかがわかれば、迷うこともありませんし、倒産する会社など出てこないはずです。誰も先のことはわからない、というのは当然のことです。しかし、それでも、まずは数字を置いてみることが、実行力のある会社をつくる第一歩になります。

後継者として初めて予算や計画をつくる立場になったとき、この最初の一歩でつまずいてしまう方は少なくありません。正確な数字が出せないことを、実行力がないことと混同してしまうからです。

数字が読めないことと、数字を置けないことは、まったく別の問題です。前者は経験によって磨かれていきますが、後者は、経験に関わらず、今日からでも変えられる姿勢の問題です。

目標は「意思」、手段は「実行力」

目標数値に、最初から精緻な根拠はいりません。経営者が「この会社をこうしたい」「ここまで成長させたい」と考えるのであれば、まずはその意思を数字にする。極端に言えば、鉛筆なめなめで決めても構わないのです。

目標とは、予測ではありません。経営者の意思です。

だから、「なぜ1億円なのか」「本当に達成できるのか」と、目標の根拠ばかりを詰めても仕方がありません。経営で本当に問われるのは、その先です。

目標が「意思」なら、手段は「実行力」です。

1億円という目標を掲げたなら、その1億円をどうやって実現するのか。新規顧客を何社増やすのか、既存顧客への販売をどれだけ伸ばすのか、新商品をいくつ投入するのか、単価をどう上げるのか、営業訪問を何件増やすのか。ここでは逆に、徹底的な具体性が必要になります。

そして、手段は目標と同じ量では足りません。1億円を目指すなら、2億円、3億円分になるくらいの手段を出してみる。10個で足りなければ20個、20個で足りなければ50個と出す。すべてが成功するわけではないからこそ、目標を大きく上回る量の手段を持っておくのです。

最初は「こうなりたい」という意思だけだった目標も、手段を積み上げることで、次第に実現可能な数字へと変わっていきます。

つまり、目標の数字そのものに根拠をつくるのではなく、手段を積み上げることで、後から目標に根拠を与えていくのです。

経営者や後継者の力量が表れるのは、立派な目標を掲げられるかどうかではありません。その目標に対して、「まだないか」「もっとできないか」と、手段を出し続けられるかどうかです。

手段が足りないとき、すぐに「目標が高すぎた」と考えてはいけません。その前に、「本当に手段を出し切ったのか」を問うべきです。

目標は、経営者の意思で決める。

手段は、執念を持って出し切る。

目標を掲げるだけなら誰にでもできます。しかし、その目標を実現するために、どれだけ多くの手段を考え、具体化し、実行に移せるか。そこに会社の実行力が表れます。

「目標=意思」「手段=実行力」。

経営計画をつくるときに本当にこだわるべきなのは、目標数値のもっともらしい根拠ではありません。その目標を現実に変えるだけの手段の量と、その手段を出し切る迫力なのです。

後継者のあなたへ

数字に自信が持てず、目標を立てることをためらってしまう。そんな経験を持つ後継者は少なくないと思います。しかし、目標は最初から完璧である必要はありません。

まずは鉛筆をなめながらでも、数字を置いてみる。そして、その数字をやりきるための手段を、出せるだけ出してみる。数字を当てることよりも、手段を出し続けることに、力を注いでみてください。

今あなたが避けている「数字を置く」という一歩を、踏み出せずにいる理由は何でしょうか。

本記事は、事業承継センター取締役・東條裕一の原稿「勇気をもらう経営者の言葉」をもとに構成しています。