本シリーズは、事業承継センター取締役・東條裕一が、経営者から聞いた言葉と、経営者として伝えたい言葉を書き留めた「勇気をもらう経営者の言葉」を、一言ずつコラムとして再構成したものです。志や覚悟、そして勇気を、後継者のみなさんと分かち合えればと思います。

目的は何だっけ?で選択肢の半分は消える

なぜ、この言葉なのか

実行力とは、決めたことを前に進める力のことです。しかし、多くの経営者がつまずくのは、実行そのものよりも前の段階、つまり「何をやるか」を決める段階です。

目の前にはいくつもの選択肢が横たわっています。どれを選ぼうか、思案に暮れる。あれもよさそうに見える、これも捨てがたい。そうしているうちに時間だけが過ぎていき、結局何も決められないまま、実行に移すタイミングを逃してしまう。そんな経験をしたことのある経営者は、決して少なくないはずです。

選択肢が多いこと自体は、悪いことではありません。むしろ選べるだけの手段があるというのは、恵まれた状況とも言えます。問題は、その選び方です。選び方を誤ると、いつまでも決められず、実行に移せないまま堂々巡りを続けることになってしまいます。

目的に立ち返ると、迷いは消える

そんなときは、「目的は何だっけ?」と、もう一度自分に問いかけてみてほしいのです。

不思議なことに、これだけで驚くほど迷いがなくなります。手段が絞られていきます。それまで何を悩んでいたのか、ばかばかしくなるときさえあります。

選択肢というのは、多くの場合、目的を達成するための「手段」の候補にすぎません。手段そのものに気を取られていると、どれも捨てがたく見えてしまいます。あちらを立てればこちらが立たず、優劣がつけにくく感じられるのです。すると、目的を置き去りにして、手段と手段の比較に時間を費やしていることが少なくありません。

しかし、目的に立ち返れば、その目的にかなうかどうかという、たった一つの基準で判断できるようになります。基準が一つに定まれば、選択肢は自然に絞られていきます。目的にかなわない手段は、その時点で候補から外れていくからです。

基準がはっきりすれば、決断のスピードも上がります。そして実行力が増します。正しい選択ができるようになります。迷っている時間そのものが、機会の損失であることに気づくはずです。

後継者のあなたへ

決められない、動けない。そう感じるとき、多くの場合は選択肢そのものではなく、目的を見失っていることが原因です。

次に迷いが生まれたときは、目の前の選択肢を並べる前に、一度立ち止まってみてください。そして、「そもそも目的は何だっけ?」と自分に問うてください。目的がはっきりすれば、選択するべき手段もはっきり見えてくるはずです。

今、自分は何のためにこれをしようとしているのか、あなたはすぐに答えられるでしょうか。

本記事は、事業承継センター取締役・東條裕一の原稿「勇気をもらう経営者の言葉」をもとに構成しています。